枚方寝屋川消防組合が2022年10月に採用する消防吏員(消防職員のうち階級を有する者)を5月20日から募集しています。
多様な人材が活躍できる発展的な組織を目指し、今年から採用試験制度を大きく変更したのが特徴です。
具体的には新たに社会人区分(3年以上の勤務歴がある26〜33歳)を新設したほか、学歴資格要件を撤廃。体力試験実施種目を7種目から4種目(握力、立ち幅跳び、長座体前屈、腕立て伏せ)に変更、小論文試験を廃止するなど、人物・実力主義の内容になっています。
採用試験を前にして、5月22日(日)に消防本部で採用説明会が行われたので、その様子を見てきました。
指令センターの見学
対面方式で行われた今回の説明会では、消防本部の3階にある指令センターを見学できました。(参考:2021年8月の説明会はオンライン方式でした)
この指令センターでは枚方市と寝屋川市のほか、交野市消防本部管内の119番通報を受信しています。2022年中の119番通報件数は6万1830件で、平均すると1日169件に達します。
大きなモニターの左側に表示されているのは、気象情報などです。全国の気象情報が入手できるように、NHKの放送内容が確認できます。取材時にはちょうど茨城県沖で発生した最大震度5弱の地震のニュースが表示されていました。
その右側には、消防車両の出動状況がズラリ。帰署、出動、収容、病着、整備などの状況が一目で分かるようになっています。病院の診療科目や空きベッド数などの情報も把握できる優れものです。
一番右側は、高い建物から管内を撮影した様子です。火災発生の通報が入ったら、現場付近にカメラを合わせて煙が上がっているかどうかを確認することができます。
手前の机に座っているのは、情報指令課の職員です。通常時は前の3人ぐらいが対応するようです。
テストモードで119番通報が入った時の状況を再現しました。はじめに情報指令課の職員が「火災ですか、救急ですか」と質問し、続いて具体的な通報事案の内容や通報者役(職員)の住所・氏名などの情報を聞き出します。
通報者役の自宅をすぐに画面に表示し、入電から数十秒で「今救急車を向かわせましたので」となったのには驚きました。
コンピューターに通報内容を入力すると、 待機状況や到着時間などを瞬時に考慮して出場隊に指令できるようにプログラムされているみたいですよ。
パネルディスカッション・質疑応答
指令室の見学が終わると、5階の会場でパネルディスカッションが行われました。
登壇したのは救急担当(左)、消防担当(右)、
救助担当(右)、
予防部の4人です。パネルディスカッション(約45分)では司会者から、質疑応答(約15分)では出席者から質問がありました。
Q:消防士を目指したきっかけを教えてください。
A1:私が大学生の時、目の前で人が倒れたことがありました。しかし当時の私は周囲の人に呼びかけることしかできませんでした。その時偶然居合わせた救急隊員の方がすぐに駆けつけてくれ、多くの人がいる中で、冷静かつ的確な処置をしているのを目の当たりにし、自分の無力さを痛感するとともに、救急隊員へのあこがれを抱くようになりました。
A2:以前は東京にある証券会社で2年半ほど営業の仕事をしていました。在職中に転職を考えるようになったのですが、自分の将来について考えていく中で「生まれ育った地元で人の役に立ちたい」という思いが強くなり、消防を目指しました。
営業マンとして培ったスキルは、訓練指導や災害現場で市民の方とコミュニケーションを取る時などに役立っています。また営業マン時代の目標の立て方は、消防の仕事にも活きています。
Q:嬉しかったことは何ですか?
A1:苦しんでいた人が安心した顔をしたり、傷病者やご家族の方から「ありがとう」と感謝された時が嬉しいです。前の現場より良い処置ができた時も嬉しいです。
A2:民間企業にいた時より圧倒的に感謝される仕事だと思います。消防の仕事は、知識や技術を身につけることが直接人の命を救うことにつながります。頑張った分だけより多くの人の役に立てるのは、消防ならではの魅力だと思います。
A3:予防部は消防設備の検査をしたりする部署ですが、意外と消防設備に関する質問を市民の方から受けます。消火栓などの設備は高価なものですが、「こういう場所にいる、いらない」などのアドバイスをすると、設計の立場の人から感謝されることがあります。
以前市民の方から「この前の消防訓練のおかげで消火器を使って消火することができました」という実際の声を聞くことができ、普段の業務の重要性を感じることができました。
Q:つらかったことは何ですか?
A:日常生活では見られない悲惨な現場を目にすることがあります。そういう時は「なんとかしてあげたかったな」と思います。しかし災害現場で「ありがとう」と感謝の言葉を受けた時は、何より感慨深いものがあります。悲惨な現場を目にした時などは、他の隊員と共有してケアすることも心がけています。
Q:どういう人が消防に向いていると思いますか。
A1:人命救助の最後の砦なので、何事も諦めずに取り組む人が向いていると思います。
A2:人のために仕事ができる人が向いていると思います。
A3:オンとオフが切り替えられる人が向いていると思います。
Q:枚方寝屋川消防組合の良いところを教えてください。
A1:けっこうみんなアットホームで、人間関係が良いです。
A2:消防隊、救助隊、救急隊などの部署に専属で配属される点です。担当業務に集中して取り組むことができ、スキルも高めやすいです。
A3:資機材が充実しています。ウインチ、発電照明灯や高度救助用資機材を搭載したⅢ型救助工作車が管内に4台あるのですが、この車両は幅広い災害に対応できます。また昨年守口市のトンネル掘削現場で作業員が閉じ込められた事故の時も、資機材が充実した枚方寝屋川消防組合が応援に向かいました。
Q:力を入れて取り組んでいることを教えてください。
A1:火災は発生頻度が少ないので、日頃の訓練でどれだけ習得できるかに力を入れています。
A2:36歳なので、体力の維持に取り組んでいます。プライベートでも筋力トレーニングを行っています。
A3:予防部の予防指導課として、住宅用火災警報器の設置をすすめています。火災は住宅での発生の割合が高いので、住宅用火災警報器の設置により被害の軽減が期待できます。
Q:消防学校時代の思い出を教えてください。
A:訓練や寮生活は厳しかったですが、みんなで食べるご飯など楽しかった思い出もあります。大阪府の消防学校に入るので、府内全体で同期のつながりができます。
Q:プライベートについて教えてください。
A1:自転車に乗るのが好きです。この前は名古屋まで行きました。
A2:ゴルフが好きです。他の消防署にいて普段あまり接点がない人とも、ゴルフを通じて交流があります。
Q:女性の隊員でも活躍できますか。
A:女性の隊員でも活躍できます。消防署に配属された当初は、女性の私が足を引っ張ってしまうのではないかという不安がありました。しかし、上司や先輩方が日々熱心に指導してくださるので、訓練を重ね、現場を経験していくうちに、活動への不安が少しずつ自信へと変わっていきました。男女関係なく、色々なことにチャレンジさせてくれる職場だと思います。
出産・育児に関する休暇取得制度も充実しています。
枚方寝屋川消防組合って、どんな組織?
採用説明会では、枚方寝屋川消防組合の組織概要や取組内容などの紹介がありました。順番的には一番最初(その後に指令センターの見学→パネルディスカッション・質疑応答)だったのですが、やや専門的な内容になるので、関心のある方に見ていただければ幸いです。
枚方寝屋川消防組合は大阪府内で大阪市消防局、堺市消防局に続いて大きい消防組織で、消防吏員( (消防職員のうち階級を有する者 )数は627人(うち女性25人)います。
管内に消防本部を1ヶ所(枚方市新町)、消防署を3ヶ所(枚方消防署、枚方東消防署、寝屋川消防署)、出張所を15ヶ所設けることにより、5分で到着できる消防・救急体制が確立されています。
近年は職員の若返りが進み、職場全体が活気に満ちています。
若手が増えると重要になるのが人材の育成ですが、枚方寝屋川消防組合では消防学校(6ヶ月間)卒業後の2年間を基礎研修期間として位置づけ、「新人職員育成マニュアル」に基づき、100項目以上ある履修項目を身につけることにより、1人前の消防士に育てていきます。
また基礎研修期間の修了後は各部署に専任で配属されるため、担当業務に集中して取り組むことができます。またジョブローテーションにより適正な人員配置を行うことで、効率的な業務運営を行い、専任制のデメリットを解消しています。
枚方寝屋川消防組合は組織規模と職員数のバランスが絶妙なため、資器材が揃っている、休みが取りやすい、職員同士のコミュニケーションが取りやすいなどのメリットがあるとのこと。
業務内容は、大きく分けると6つあります。
消防担当は火災現場はもちろん、交通事故、ガス漏れ警戒、水防活動、火災調査など、多種多様な災害現場に出動する部門です。現場以外にも立入検査、地水利調査、届け出受付、訓練指導などあらゆる業務を担当します。
消防担当は、消防学校を修業した新人消防士が最初に配属される部署です。最低2年間は消防担当として勤務することが義務付けられており「一流の消防士」になるための礎を築きます。
救助担当は、火災、交通事故、水難事故、機械事故など、人命危機が直近に迫っている災害現場に出動し、あらゆる救助用資機材を駆使して、現場の最前線で活動する人命救助のエキスパートです。
枚方寝屋川消防組合には3署に9隊の救助小隊が配置されており、枚方消防署の3隊は高度救助隊として位置づけられ、高度救助資器材(地震警報機、地中音響探知機、夜間暗視装置など)を取り扱える高度救助隊員が配置されています。(高度救助資器材を使った訓練の様子は2021年8月の記事をご覧ください。)
枚方東消防署には大阪府内の消防署では珍しい25mプールがあり、淀川の水難救助活動などに備えています。
救急担当は、急病や怪我、交通事故など年間約3万5000件を超える救急現場に対処しています。2017年に医師が乗車するドクターカーの運用を開始するなど、更なる救命率の向上に取り組んでいるとのこと。
警防部は、火災調査や119番通報の受信・指令などを担当。予防部は消防用設備の検査を行ったり、防火管理講習を行い火災予防の啓発活動を行ったりしています。
総務部は、消防組合を運営し災害現場活動に従事する隊員のバックアップを行うことで、市民の安全と安心を守っています。
勤務体制は事務的な仕事を担当する「毎日勤務」と災害活動する「交替制勤務」の2つに区分されています。
毎日勤務は、総務部、警防部の一部、予防部、各消防署の警備課及び予防課が。交替制勤務は消防担当、救急担当、救助担当、警防部情報指令課、指揮支援・調査隊などが該当します。
枚方寝屋川消防組合では交替制勤務に3交替制を敷いており、3週間1サイクルで当務日(勤務する日)、非番日(勤務明け日)、週休日(休みの日。日勤日の日あり)を繰り返すのが特徴です。2交替制より生活リズムが安定するため、プライベートも充実させることができるのだとか。また3交替制以外の休暇制度もあるため、休みも取りやすいとのこと。
人事制度も総合評価制度や自己申告制度などの導入により、公正な評価により努力が報われる組織体制、風通しの良い働きやすい職場環境整備を目指しています。
採用試験については、新たに社会人区分(3年以上の勤務歴がある26〜33歳)を新設したほか、学歴資格要件を撤廃。体力試験実施種目を7種目から4種目(握力、立ち幅跳び、長座体前屈、腕立て伏せ)に変更、小論文試験を廃止するなど、人物・実力主義の内容になっています。
「消防に必要な気力・体力を兼ね備えた人」「仕事に誇りをもって、市民のニーズに即応できる人」「自分自身の可能性を信じ、前向きに努力できる人」「特に問題意識を持ち、新たな課題に果敢に取り組める人」を求めているとのこと。
まとめ
説明会の紹介は、以上となります。
応募の受付期間は6月3日(金)まで。詳しく知りたい方は枚方寝屋川消防組合の公式ホームページをご覧ください。
【地図】枚方寝屋川消防組合消防本部
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※「7Nan」さん、情報提供ありがとうございました。(情報提供はこちら)