寝屋川市がいじめ問題に対応する「監察課」を設置。初期段階から行政的アプローチを行い、いじめゼロへ

寝屋川市役所が子供の命と尊厳を守るため、10月17日(木)から市長部局に「監察課」(市長直轄の部署)を設置して第三者視点で学校のいじめ問題に対応します。

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監察課は弁護士資格を持つ職員やケースワーカー(10人体制)によって組織され、いじめ事案の発覚当初から被害生徒、加害生徒、保護者、教員などに積極的に関与し、調整・調査・要請・勧告を行う予定です。

〈業務の流れ〉
①いじめ事案の発生

②学校、いじめ防止対策委員会(学校内)、当事者などから監察課への通報

③ケースワーカー等がいじめの事実、程度を調査した上で「いじめ判定会議」を開催し、監察課で対応する「いじめ事案」かどうかを判定する。

④「いじめ事案」と判定した場合は、被害生徒・加害生徒・保護者。教員等へ聞き取りを行い、いじめ是正に向けたアプローチを行う。

★フロー図
フローイメージ
※寝屋川市企画三課提供

フロー図 段階
※寝屋川市企画三課提供

「いじめ対応の新組織」設置にあたって、寝屋川市役所では看板の設置(1枚目の写真)や広瀬慶輔市長の訓示(下の写真)が行われました。
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担当部署の職員に語られた訓示の内容は、以下の通りです。

・これまでのいじめの教育的アプローチでは、いじめをする側、される側ともに教育をする・指導をする対象の児童・生徒ということだった。

・これから皆さんにお願いしていく業務の中で監察課としては、新たに被害者・加害者という概念も導入するのが最も大きな違いになる。

・大変困難な業務になると思うが、子供達の周囲には限られた数の大人しかいないので、もし保護者や教員が十分な解決ができなければ、子供達は絶望することになる。皆さんは関われる唯一の第三者の大人として子供達を絶望させないという意味では貴重な役割である。

・皆さんは各部署から選抜された大変優秀な職員である。皆さんが役割を果たしていじめの解決に導くことができれば、この処方箋を広めて全国からいじめを根絶する一助になると私は思っている。

・大変大きな役割を担うことになるが、躊躇せずにあたって欲しい。もしトラブルに巻き込まれても市として全面的に責任を負う形を取ることになる。今回裁判費用の30万円の補助を実施する。これは市がいじめ問題を解決できず問題となった時も対象となる。

・教育委員会などにはこれまで通りいじめ問題にあたってもらうが、これに行政的アプローチを加える。市として果たす役割べき役割を果たす、その覚悟を示す意味もある。その意味を理解していただきたい。

・最も重要なことは子供に一刻も早く正常な日常生活を取り戻してもらうことが最優先であるということを肝に銘じて職務を宜しくお願いいたしたい。

続いて報道陣の質疑応答では、以下のようなやり取りがありました。

Q:監察課を設置した意義を改めて教えて欲しい。

広瀬市長:今までは教育委員会や学校が中心となっていじめ問題に対応してきたが、全国でいじめの見逃しや対応の遅れなどが繰り返されている。こうしたことが学校や教育委員会など個別の問題なのかということに疑問を感じた。もしそれが教育的アプローチの限界ということであれば、どんなに優れた先生であっても同じ問題を繰り返されるのではないか。もしそうであれば、新たに行政的なアプローチを準備しなければいけない。今回の改革で今後スピーディーに対応できるのではないかと期待している。

Q:教育分野に行政が介入する側面があることについての線引きはどうするのか。

広瀬市長:大変デリケートな問題で明確に示していく必要があるので、12月市議会定例会で監察課の権限に関する条例を提案する予定である。

Q:今回は加害児童と被害児童をはっきり分けてということだが、厳しすぎるという意見はないのか。

広瀬市長:当然あると思う。第一義的にはいじめを受けている児童を日常生活に戻すことが最優先になることから、監察課の人間は生活保護のケースワーカーを務めたことのある人間など精鋭をそろえている。そうした中で臨機応変に対応していくことになると思う。

Q:例えば学校の先生が加害児童に対する対応があまりできていないとなった場合には、監察課は学校の先生に対しても指導できるのか。

広瀬市長:そのような形になる。先生や学校長などに勧告をさせていただくこともあると思う。

Q:訓示ではどのような願いを込めて述べられたのか。

広瀬市長:今一番重要なのは子供達を絶望させないということ。子供たちの周囲には限られた大人しかいないので、親とも学校の先生とも違う大人が本気で関わるという姿勢を見せる、そのメッセージを込めた。

Q:改めて監察課にどのようになってもらいたいのか、期待するのか。

広瀬市長:躊躇することなく案件に関わって欲しい。これまでの連絡・調整ではなく、自分たちがコントロールするという意識で取り組んでもらいたい。

Q:これまでの教育委員会的な対応とはどのように変わるのか。

広瀬市長:これから教育的アプローチはいじめの予防や日常の教育的指導についてやってもらう役割が中心になる。事態の収拾や責任は行政が負う形になる。

Q:弁護士費用の補助も12月の議会に出すということだが、その狙いはどういったところにあるのか。

広瀬市長:これまで被害者側は費用や知識面で十分に法的な措置を取ることができなかったが、ハードルを下げるとともに抑止力にもなると考えている。

Q:これまでは学校内で解決していたことが行政的な解決や訴訟など、そういったことが増えていくというイメージで良いのか。

広瀬市長:第2段階の行政的アプローチを起動させるためにも、第3段階の法的アプローチを準備する意義は大きいと考える。

Q:結果的には市が訴えられるケースが増えるかもしれないけども、法的なアプローチを行っていくと…?

広瀬市長:弁護士費用の補助というのは市が訴えられた場合も含んでいる。市が訴えられたとしても行政的な責任を果たしていくという姿勢を見せる。

Q:学校現場としてはいじめとからかいの区別がつかない段階で「予防的なアプローチをしたいんだ」というケースも出てくるのではないかと思うのだが…。

広瀬市長:学校とは別に直接子供達にアンケートを配る形で情報を吸い上げる。「いじめがある」、「いじめの疑いがある」という案件が上がってきた段階で、セクハラの訴えと同じで本人から「いじめられている」という申告があった段階でいじめと認定してスタートする。

Q:初期段階から行政が関わるのは非常に厳しい措置だが、いじめ問題にこれだけ市長が力を注ぐ要因にはどのようなものがあるのか。

広瀬市長:個人的にいじめを受けた経験は幸運なことにないが、寝屋川市や他の自治体でいじめが繰り返し起こっていることに対し、どこかが処方箋を出していかなければいけないということ。これまでの薬に効能がないのであれば、寝屋川市として新たな処方箋を試してみて、それが上手くいくのであれば全国にその処方箋を公開したい。そうやって全国のいじめ問題に対応していくということ。

Q:行政的アプローチの導入は現場からの声なのか、市長の考えからなのか。

広瀬市長:現場からの声もある。寝屋川市も含めた全国の自治体では、いじめ問題が繰り返し発生している。どこかの段階で誰かがやらなければいけないのであれば、まずは寝屋川市からやっていこうという思いでやっている。

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