\北大阪商工会議所×ねやつー/
地区内における商工業の総合的な改善発展を図り、社会一般の福祉の増進に資することを目的としている商工会議所と、寝屋川の地域情報を日々発信している寝屋川つーしんのコラボ企画!
北大阪商工会議所。
一度は聞いたことがある人が多いとは思いますが、「一体何をしているのか?」「どんな企業が参加しているのか?」といったことまで知っている人となると数はぐっと減るのではないでしょうか。
少しでも身近に感じていただけたらと、北大阪商工会議所に入会されている企業を月に1度のペースでご紹介していきます!
今回のNijiriguchiの主人公は、大阪・寝屋川市などで「四國うどん」や「かつ辰」を展開するマココロ株式会社。
去る9月30日。マココロはこれまで別々に運営していた2つを融合させたハイブリッド店として「とんかつ・うどん かつ辰 石津寝屋川店」をオープンした。
ここにはトンカツ店としては全国でも珍しいドライブスルーを導入。また、非接触の注文システムの導入などDX(=デジタルトランスフォーメーション)を徹底し、ウィズコロナの時代にあっても経営が成り立つ飲食店の実現に向け、挑戦を続けている。
その最前線で奮闘するマネージャーの有馬 健志氏と店長の溝尻 裕子氏に話を聞いた。
「顧客第一」と「経営」をどう両立するか。創業者の苦闘
マココロの歴史は、先代社長の栗田 延太郎氏にさかのぼる。
戦争で両親を亡くした延太郎氏。小学生のころから兄弟の世話をしながら働いていたという。
そして18歳の時にパン屋に修行に入ったことをきっかけに飲食の世界に飛び込む。
22歳での洋食屋の創業などを経て、大阪・門真市に「みのり食堂」をオープンした。
近くに拠点を構える松下電器産業(現:パナソニック)の社員が集い、まるで社員食堂のような状態になるほど繁盛したという。
しかし、みのり食堂は思わぬ理由で行き詰まる。
延太郎氏は、社員の要望に応じメニューをどんどん増やしてしまい、その数は100種にものぼった。
このため必要な食材が増え、繁盛しているにもかかわらず経営がうまくいかなくなってしまったのだ。
「顧客を思う気持ち」と「経営」をどう両立させていけばよいのか。延太郎氏は、メニュー数を8品目に絞り、新たにうどん屋を立ち上げる。これが「四國うどん」の始まりだ。
延太郎氏は客が「安心して食べられる」ことに徹底的にこだわった。
出汁に使ういりこや、麺に使う小麦粉などの素材を吟味。また、加工も自社で行うなど、製造にも妥協しない。
こうした顧客第一の方針が実り、事業は順調に伸び3店舗にまで拡大した。そして延太郎氏が次に挑んだのが「トンカツ」だった。
『郊外型』トンカツが大ヒット!年間売り上げ3億円
うどんとは全く分野の異なる「トンカツ」進出の背景に何があったのか。マネージャーの有馬氏はこう語る。
「延太郎氏は当時、アメリカのレストラン事業に精通しているコンサルタントと親しくしていた。その中で『次は郊外型のトンカツが来る』との話があった。
それを受けて全国の成功事例をもとに実際やってみようという話になった」。
トンカツ屋「かつ辰」を1999年に開業。ここでも食材へのこだわりは貫かれた。
店長の溝尻氏は
「豚肉探しを社長自らがしていた。大阪を探して見つからなければ県外まで飛び出していき、豚を見て自分で食べて選んでいた」と語る。
かつ辰のトンカツは評判を呼び、社長自らが『爆発的』と表現するほどの人気店となった。年間の売
り上げは3億円を誇ったという。創業から23年経った今も「かつ辰」は地域で愛されるブランドとなり、コロナ禍の苦境にあっても売り上げはほぼ回復しているという。
震災をきっかけに社名を「マココロ」に
「かつ辰」の開業から3年後の2002年。延太郎氏の息子、栗田 太樹氏が社長に就任した。そして会社に思いもよらぬ転機が訪れる。
2011年の東日本大震災だ。太樹氏は当時のことについて会社のホームページに次のように記している。
『震災をきっかけに、(中略)会社のビジョンを考え直すために、彷徨う3年間』。
そして震災から5年が経った2016年。太樹氏は社名を「マココロ株式会社」へと改めた。
「マココロ」という言葉には「真心を持って、よい空間を作り出す、間をもって幸せをなす」という思いが込められている。
ただ飲食を提供するだけでなく、作る人や食べる人たちが豊かで幸せな気持ちになってほしいとの思いだ。
さらに社名変更をしたことで、社会的な活動を強めていくというメッセージを打ち出したと店長の溝尻氏は解説する。
「ただ食を提供するんじゃなくて社会性のある活動をやっていきたいなと考えた時に、『うどん』とか『トンカツ』っていう名前じゃなくて『マココロ』っていう会社の名前にした方がいい」。
キーワードで意識に変化が
そしてマココロは社会的な取り組みを「六次化」「ダイバーシティ」という2つのキーワードに先鋭化させていく。1つ目の「六次化」とは、一次産業(生産)・二次産業(加工)・三次産業(販売)のすべてに自ら関わることで、客に安心安全な食を提供する取り組み。
2つ目の「ダイバーシティ」は、障がい者が生産した野菜などを店で使い、障がい者への経済的還元につなげる取り組みだ。
顧客第一は創業の時から貫かれている方針であったが、改めて「六次化」「ダイバーシティ」といった具体的な言葉で表現されたことによって、社内の意識に変化が起き始めたとマネージャーの有馬氏は言う。
「知らない農家じゃなくて、実際に会って仲間としてやっているところから仕入れていこうとか、そういう形で一次産業に関わるということは以前からやってきた。社員も心の中ではみんな意識していたが、『六次化』とか『ダイバーシティ』という言葉がうまく当てはまった。社名変更したことで、パートやアルバイトさん、社内に浸透し、以前とは変わったと感じている」。
『集大成』の新店舗がオープン
ことし9月。有馬氏が『集大成』と表現する新たなコンセプトの店がオープンした。
「とんかつ・うどん かつ辰石津寝屋川店」だ。
この店舗開発には、国が行う事業再構築の補助金が使われており当所とともに申請を行った。
新店舗が打ち出すのは「コロナ禍でも存続できる新たな飲食店」。ドライブスルー・モバイルオーダー・配膳ロボットなど、新たな販売手段やDXを取り入れた。
中でも肝となるのはドライブスルーだという。
導入決断の背景を有馬氏は次のように明かす。
「ウィズコロナの時代に店をどうするか。コロナ禍でも売り上げを伸ばしているのはマクドナルド。その要因としてドライブスルーがあった。他にほとんどやっていない中で可能性があるのなら
と始めた」。
全国的にも珍しいというトンカツのドライブスルー。実現までには試行錯誤が重ねられた。
その一つが『揚げ』の工程だ。
イートインでは注文が入ってからトンカツを揚げ始めるが、ドライブスルーではその時間を待たせるわけにはいかない。そこで『揚げ置き』を取り入れることにした。
15分置いても品質が落ちないようにするため、保温の方法を試したり、油の酸化を防ぐ機械を新たに導入したりして、時間が経ってもおいしさを保つ方法が見つかった。
一方、DXにもこだわりを持って進めている。店内で使うタッチパネルの開発はオーダーメイドで行っているそうだ。
「普通は、大企業が開発したシステムを買って『このシステムでやります』となるケースが多いが、それではオリジナルで、うちのやりたいことができない。だからシステムと組んで1からやっている」という店長の溝尻氏。
システム開発の経験はないが、客が使いやすいシステムを目指し、日々改良を重ねている。
注文から決済まで客が非接触で行うことができるだけでなく、ポイントカード、顧客情報管理、
仕入れや給与、勤怠管理など全てを一元化する予定だという。
しかし、大切なことは忘れていない。
「DX化が進むと、一見無機質な雰囲気にはなるが、人間にしかできない料理の塩梅などのサービスは変わらず人間がやっていきたい。
私たちができることは『美味しく調理すること』や『良い接客をすること』。スタッフには実際に食べて感じてもらい、自分ごととしてお客様に説明できるようになってもらいたいと日々研修している」と有馬氏は話す。
『よりよい社会を目指して』
全国のモデルに
新店舗ではコロナ時代の新たな社会課題にも向き合っている。テイクアウトなどで使う容器のゴミだ。
「売れたら嬉しいけど『僕らゴミいっぱい出してるやん』みたいなところに罪悪感を感じる」という有馬氏。
このため、新店舗で使う容器はプラスチックの部分を古紙に変更。ゴミとして出るのはビニールの汚れた部分だけ。コストは高くなったが「社会のため」を考えて決断したという。
「うちがもし成功したら、他社さんも真似してもらえる。真似してもらった方がうちとしては自信にもなる。全国の飲食業界を盛り上げるためにも、ここは成功させたいなと思っている」。
様々な取り組みを進めるマココロが見据えているのは飲食業界全体の未来だ。
マココロ株式会社
「とんかつ・うどん かつ辰 石津寝屋川店」
〒572-0815
大阪府寝屋川市河北東町1-25
TEL:072-825-1255
マココロ株式会社公式サイト
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